脳波と瞑想の効果について
「ワン・コマンド」で初めに学ぶことは脳波の状態についてです。脳波の研究は日本でも昔から行われており、例えば1996年には稲永和豊博士が青春出版社より「〔脳波〕の新世界」を出版されていて、Fmシータ派について述べています。稲永博士は九州大学医学部を卒業してからアメリカに渡りイリノイ州立大学、カリフォルニア州立大学へ留学されているので、当時日本人にはなじみの薄かった「脳波」に着目されたのかもしれません。また、「ワン・コマンド」の創始者アサラ・ラブジョイが行動を共にした故ポール・リビロット氏は25年にわたり、同じカリフォルニアにあるエサレン研究所のリーダーの1人でした。「ワン・コマンド」の源流はこのエサレン研究所とつながるプログラム、そしてアサラ自身が学んできたNLP、量子論、ヒプノセラピー、エネルギー・ヒーリングが融合された科学的、実証的なものです。
現代人である私たちがネガティブな情報にまみれ、ストレスを抱えている時に、私たちの脳波は例外なく高い周波数になっています。具体的には脳波計で13ヘルツ以上の「ベータ(β)波」と呼ばれるエリアに入っています。覚醒時には私たちの脳波はほぼそのような状態なのですが、リラックスしている時や目を閉じている時などは周波数が少し下がり、8~12ヘルツの「アルファ(α)波」というエリアに入ってきます。アルファ波はこれまでも「右脳活性化」やパフォーマンスを上げるなどいろいろなところで語られていて有名な脳波の周波数帯です。
ところが先述の稲永博士は著書の中で「アルファ波が必ずしも理想ではない」と説いています。例としては、痴呆状態の時は脳全体からアルファ波が出ていることや、年中リラックスしていてだらけていてはかえってマイナス、とおっしゃっています。そして覚醒時に「シータ(Θ)波」が出ていることが重要と述べていらっしゃいます。そして、「ワン・コマンド」もまた、このシータ波にスポットを当てた実践的なプログラムなのです。
シータ波について
「シータ(Θ)波」とは、アルファ波より更に周波数が低い4~7ヘルツの周波数帯を指します。私たちの日常生活では「レム睡眠」の時に良く現れる周波数帯です。レムとは「Rapid Eye Movement」の頭文字をつなげた言葉で、「急速眼球運動」のことです。眠りがまだ深くなく、身体は休んでいても脳がまだ働いている状態で、夢を見ているような時にこの運動が起きます。これより睡眠が深くなると更に周波数が下がり、脳波は「デルタ(Δ)波」という3ヘルツ以下のエリアに入ってきます。そこでは脳も休んでおり、意識が無い状態になっています。
ここまで述べた4つの周波数帯の脳波は、どれも私たちの脳から出ているもので、状況に応じて多かったり少なかったりして脳の状態を決めています。また、その周波数帯から外れた(ベータより上、デルタより下)エリアも時々あるらしいのですが、まだ研究が進んでいない分野のようですので、当ページでは詳しくお伝えすることはできません。ともあれ、結論から申し上げれば、私たちの「ワン・コマンド」は「シータ(Θ)波」を覚醒時に活用していこうというプログラムということになります。
先ほど「夢を見ている時」の脳波がシータ波優勢ということを書きました。ではシータ波の状態というのはどういう状態か、ということをご説明したいのですが、他にシータ波優勢の状況としては、子どもの頃の脳波(5歳くらいまで)、や「ランナーズ・ハイ」の時の脳波、などが確認されています。
例えば夢の中では自分が空を飛んだり、相手が一瞬で入れ替わったり、時間や空間を無視した空想の状態があります。しかし私たちは夢の中では空想と現実の区別がつけられません。論理的にはあり得ないことを夢の中で見て、焦ったり喜んだり、悲しんだりしているわけです。目が覚めて論理的思考が働くようになると「ああ、夢か」と思い「そんなことあるわけないよな」と思うわけです。
子どもの頃も同じです。まだ発達過程にある子供は、身の回りで起きていることを論理立てて理解することができません。日々、嬉しいことや悲しいことが起きても、「なぜそれが起きたのか」を現実には理解できていません。そこに「思い込み」や「トラウマのような体験」が定着してしまうことがあります。悪い例を挙げると、両親が喧嘩ばかりしている家庭で育った子供には「自己重要感の低下」が見られるそうです。両親の喧嘩が子供の責任であるはずはないのですが、シータ波優勢の状態にある子供は、わけもなく「自分が悪いのではないか」と理不尽にそう思い込むことがあるようです。現実と思い込みは無関係なのですが、シータ波の状態では、脳はその区別がつかないのです。
一方、「ランナーズ・ハイ」では、シータ波は良い結果をもたらしています。長い距離を走ってきて、身体は現実的に疲弊しているはずなのですが、脳波の状態が変わることによって、疲れを感じなくなり、至福の感覚に包まれ、身体は軽くなっていくのです。これも論理的には説明がつかないことで、現実と理想の区別がなくなっている状態です。結果的に選手は実力を超えたパフォーマンスを発揮することができます。これは覚醒時にシータ波を活用した時の良い例と言えます。
シータ波の状態を覚醒時に意図的に作り出すことができれば、理想と現実の区別がつかない脳は、「ランナーズ・ハイ」の時のように、理想の状態を現実に生み出すことができる。簡単に言えば、これが「ワン・コマンド」の方法です。創始者アサラはその状態を、非常にシンプルな方法(6ステップ)に変えて、心理学的な体系や脳機能の詳細を理解していなくても、一般の人々が理想の結果だけを受け取れる瞑想プログラムにして提供してくれています。